2018年 3月 02日

フォーラム「有機が当たり前の未来へ:若手農家と語る、おいしい暮らしと社会の作り方」(プロジェクト研究推進員 小林優子)

user_name WG3, レポート

2月18日(日)にコープイン京都にて、使い捨て時代を考える会さん、安全農産供給センターさん主催の新春フォーラム・ワークショップ「有機が当たり前の未来へ:若手農家と語る、おいしい暮らしと社会の作り方」が開催され、FEASTプロジェクトもビジョニングとゲーミングのワークショップ運営のお手伝いをさせて頂きました。当日は、約70名の方にご参加頂き、非常に活気のあるイベントとなりました。

これまで、FEASTプロジェクトでは、未来の理想像を考えるビジョニング(Visioning)、その理想像から時間を現在に遡りながら過程・方策を考えるバックキャスティング(Backcasting)、そして実際の自分の社会的立場(職業)と異なる役割になりきって理想像を実現するためのプランを考えるゲーミング(Gaming)といった様々な手法を用いて、食と農について考えるワークシップを開催してきました。通常は、各手法につき別々のワークショップを開催するのですが、今回はビジョンを事前に設定した上で、一日でバックキャスティングとゲーミングを行うという盛沢山とイベントとなりました。FEASTプロジェクトでは、このような新しい手法を用いることによって生まれるアイディアはもちろんですが、プレーヤーにもたらす影響についても注目しています。

今回設定した未来のビジョンは、「近郊で採れた有機栽培の作物、自分で育てた有機野菜、伝統製法の調味料、本物の加工品を使って、誰もが自分のために、家族のために、料理をする。親しい人たちとおいしく体にいいものを食べて、会話も弾む。若者がいきいき働く田畑では子供が駆け、トンボや蜂が飛び回る。料理の材料も、田畑の資材も、人材も身近なところでまかなえる。食、エネルギー、資源、お金、人々が、小さい地域で幸せな循環をする。理想の食と農のあり方、それは、懐かしい未来。」というもので、多角的な視点から描かれており、こちらも盛沢山な内容です。

参加者の方は、実社会における食のシステムでの役割(生産、流通、消費)に基づき、若手の農家(生産者)さんを囲む形で6つのチーム(テーブル)に分かれ、バックキャスティングとゲーミングに挑戦しました。バックキャスティングでは、今から30年後の2048年に前述のビジョンが達成されていると仮定し、例えばその5年前はどのような社会であるか、どのようなことが達成されているか、ポストイットに書き出して、模造紙に張り付け、みんなの意見を集めていきます。自然・環境、有機野菜、農業、(美味しい、安全な)食、シェア、都市部・農村部の交流、伝統(おばあちゃんの知恵)、働き方、自給(率、技術、力)、地域経済、エネルギーなどのキーワードがほとんどのテーブルで上げられました。例えば、お茶の生産者さんを囲んでいたテーブルでは、理想の未来実現のためには、その一歩手前では、安全な食べ物に誰もがアクセスでき、都市・地方関係なく人々は農業に携わり、地域内での協力に基づき、お金がなくても生活できる社会になっていると考えました。そのために、2035年付近までに、農家は儲かる職業となり、農薬や添加物使用への課税、小農・有機を優遇する輸送システムの確立、人々の環境へ関する意識および実践の変革、環境保全に向けた法整備や資金の割り当てなどが必要であるという意見が出ました。そして、その過程に向けて、直近で私たちが目指すべき具体的なこととして、生産者と消費者の距離が縮まること、味の教育の開始、健康で伝統的な方法の再導入、種の交換・入手の自由化、茶の種を植える、子どもの農業体験機会の増加などが挙げられました。この直近にできることの中から、各テーブルの参加者が、実際に取り組んでみたいことを投票で決め、ゲーミングに移ります。

まず、①生産・流通・販売(有機農家、ファーマーズマーケット・スタッフ、食品加工業者など)、②消費者(子育て世帯、二ート、消費者運動を支援しているNPO会員など)、③役所・公共団体(都市計画、ごみ処理、野生鳥獣などを担当する地方自治体職員、教育委員会、農業大学校の研究者など)、④ジョーカー(財団役員、Youtuber、人工肉製造会社社長など)の4種類のカードを、一人一枚引きます。各カードには1~10までの番号を振られた職業・社会的立場が書いてあり、参加者は、ファシリテーターの振ったサイコロ(20面)の目に対応する職業になりきって、最も得票数の多いアジェンダに基づきプランを提案し、他のテーブルとベスト・プラン賞を競います。先ほど紹介したテーブルでは、「茶の種を植える」というアジェンダが選ばれました。プレーヤーには、ファーマーズマーケット・直売所の職員、養鶏農家、子育て世帯、消費者運動を支援するNPO会員、農林水産省の職員、大学・農業大学校の研究者、宗教関連団体の役員、日本宝くじ協会の役員という役割が割り当てられ、「一人一株のお茶の種を植えて元気になろう!」というキャッチ・フレーズで、プランを立てました。宝くじ協会が資金、土地、種の購入を支援し、子どもが生まれたらお茶の種を植えるというお茶トラスト運動を行うこととしました。養鶏農家では、鶏にお茶を飲ませ免疫力を強化します。研究者と農林水産省が協力し、種に関する情報をデータベース化し、NPOがそのデータに基づきお茶に関する資料の作成を行い、情報を拡散し消費活動につなげる、また宗教団体でも信者さんへ消費を広げていくという流れを提案しました。自分がその立場であったら、自分に何かできるか、何をすべきか、さまざまな案が展開されました。種から栽培したお茶で、人も鶏も自然も病気知らずというセールスポイントで、他の5チームの提案を抑え、こちらのプランがベスト・プラン賞を受賞しました。

時間を遡って考えること、現実とは異なる役割に自分を置くことで、異なる角度から、自分が今できること、やりたいことを考えることが可能となります。そして、周りの意見を聞くことにより、新たな視点が引き出されることももちろんあります。今回のイベントがそのような機会、また「有機が当たり前の未来」に向け、ご自身で行動を起こす何かのきっかけになっていればと思います。参加者のみなさま、イベントを企画してくださった使い捨て時代を考える会さん、安全農産供給センターさん、ありがとうございました!

バックキャスティングの結果報告に聞き入る参加者のみなさま

バックキャスティングからこのようなアイデアが生まれました

(撮影:小林優子)

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