2018年 3月 14日

モデルと賞と落葉:肖像権に関する考察(プロジェクト研究員 小林舞)

user_name WG2, レポート

ソナム・フンツォ(Sonam Puntsho)は、ブータン王立大学自然資源大学(以下、CNR)の学生で、FEASTプロジェクトとCNRとの共同研究プロジェクトの協力者でもある。彼の奨学金申請の推薦状を書いたことがきっかけで知り合い、幸いにも奨学金を受けることができたので、その後もFacebook上で連絡を取り合うようになった。いつもと変わらない地球研でのある勤務日に、ソナムが一枚の写真を送ってくれた。ブータンの女性が、家畜の牛の寝床として使用する落葉の山を担いでいるものだった。私は以前、「ソクシン(Sokshing)」と呼ばれる落葉を採集する林について論文を書いたことがあったので、興味があると思ったのだろう。しかし、その写真はこの上なく素晴らしいものであった。

地球研では、年に一回、職員や所外のプロジェクトの構成員の撮影した写真や映像を対象にコンテストが開催される。写真コンテストの応募締切まで一週間というところで、プロジェクトの関係者であれば応募できると知り、プロジェクトリーダーのスティーブンに写真を見せると、応募を進められた。コンテストを運営する広報室に相談した上で、早速地球研の映像資料等の提供に関する書類などの英訳に取りかかった。英語版の書類がないというころから、このような海外でのケースが初めてであることが伺えた。応募写真の取扱いに関する詳細を入念に説明したところで、ソナムはコンテストへの応募に喜んで合意してくれた。

それから2ヵ月が経過し、地球研の忘年会にて、写真コンテストの入選作品が発表された。入選はするのではないかと期待してたのだが、まさか大賞に選ばれるとは思っていなかった。代理の私の名前が呼ばれた瞬間、賞を受け取りに走った。だが、ソナムではなく、私が称賛を浴びたことには何だか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。受賞の挨拶では、この写真にまつわるストーリーを話し、また「ソナム・フンツォの代理で受賞し、次回ブータンに行く際に賞状を渡します」と伝えた。忘年会終了後すぐにソナムに連絡し、大賞受賞のニュースを伝えた。大賞をとった写真は、次年度の地球研要覧のカバー写真に使われることになっている。利用許可は撮影者からのみ得る必要があることになっていたので、写真のモデルとなっている女性からの同意は得られていなかった。彼女の名前さえ知らなかった。ソナムの知り合いであったことは知っていたので、すぐ彼女に連絡を取るようにソナムにお願いした。彼女の写真が大賞を受賞し、地球研の要覧の表紙に載る旨を。幸い彼女とはすぐ連絡がとれ、彼女も喜んでくれたとの知らせがきたので、一安心した。彼女の名前はキンレーと言い、CNRからそれほど遠くないガサ地区に住んでいる。ソナムは次回私がブータンに来る際には一緒に彼女を訪問しようと提案してくれた。実際にキンレーさんに会えるのは非常に光栄で、ぜひ落葉採集の手伝いをしたいと伝えた。

この度、現地調査のため1月5日にブータンに到着後、ソナムとスケジュールを調整し、20日にキンレーさんを訪問する予定を立てた。当日の朝、ソナムと彼の指導教官と合流し、私が受け取っていた賞状、賞品、A3サイズに拡大した写真、賞金(通常だと無料になる受賞者の忘年会費の代金)を全て手渡した。ソナムは大賞受賞を喜び、写真をCNRに寄贈すると指導教官に渡した。その後、彼女の住む村へ向け出発した。

ガサ地区のシャリ村(Shari Village)へは、車で山道を登り、数時間の道のりだった。彼女の家に着いた瞬間、現れた女性がすぐに彼女だと分かった。面識のない私が、彼女に会えたことにあまりに興奮していたので、彼女にとっては変に思えただろう。彼女は写真からそのまま飛び出してきたようで、彼女の後ろには、写真の奥に写っていた女性もいらっしゃった。彼女は口数の少ない人だったが、前日に行われた毎年恒例の儀式(プジャ)のため、彼女のお母さん、お姉さん、ティンプーで働く弟さんとその家族と大勢が集まっており賑やかな場だった。弟さんは英語の話せる方だったので、写真について話し合うことができ、私の訪問を歓迎してくれた。世界中で人々は、他人の写真を撮り、被写体の許可なく功績とすることがある。彼によると、キンレーさんは文字が読めないので、ソナムが写真の使用について口頭で説明し、善良な目的のためであると話した際、彼女はその言葉を疑うことなく信じたにすぎない。

私たちの地球研での活動が、彼女の信頼に値するものとなるよう、これからも活動を続けていきたいと思う。

ソナムが受け取ったコンテストの賞金は全額、彼女の家族に寄付された。

 

小林研究員とソナム・フンツォ氏。大賞受賞の写真と。(撮影:Om Katel)

ソナム氏と写真のモデルとなったキンレー氏(撮影:小林舞)

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