2017年 12月 25日

第22回人類生態学会国際会議参加報告 (オーストラリア国立大学 河合史子)

user_name WG5, レポート

2017年11月28日~12月1日にフィリピン大学ロスバニョス校で開催された第22回人類生態学会国際会議(The XXII International Conference of the Society for Human Ecology)に参加してきました。私は現在オーストラリア国立大学フェナースクール環境と社会研究室の博士課程に在籍しており、日本における自家採種慣行に関する研究を行いながら、FEASTのプロジェクトにも携わっています。

人類生態学会は生態学的視点を研究・教育・実践に活かすことを促すべく、1985年より開催されており、今年で22回目を迎えました。今年の学会のタイトルは「公正で持続可能な未来を展望する-多様性を認め、統合を求め、住みやすいコミュニティをはぐくむ」で、以下の4つのテーマに沿ってペーパーセッションとプレゼンテーションセッションが開催されました―(1)健康、高齢化と人口動態の変化、(2)持続可能な都市と景観、(3)食と水のシステム、(4)過渡期を迎えたコミュニティ:地方のレジリエンス、生物多様性と観光業に及ぼす影響について。

私はオーストラリア国立大学フェナースクールが開催した「地方の発展のための食と水のシステム」というセッション(食と水のシステムのテーマ)において、「農業生物多様性のインフォーマルなガバナンスについて-日本の自家採種の事例より」というタイトルで発表を行いました。このセッションでは、東アジア・東南アジアに焦点を置いて、どのようなガバナンス形態が食と水システムの持続可能性を促進できるか、ガバナンスの変化により異なるセクターがどのような影響を受けるか、地域での自主的なガバナンスの事例から何を学ぶことができ、持続可能な食と水システムの管理のためにどのような政策提言を行えるか、ということを共通の課題としました。

私の発表では、岩手県と山形県の集落において、それぞれ在来の野菜品種の採種がどのようなフォーマルまたはインフォーマルな仕組みによって促進されているのかを紹介し、関係する担い手が想定する目的が(また、関係者間の目的の一致あるいは不一致が)どのように農家の採種活動に影響を与えているかについての考察を説明しました。

人類生態学会は幅広い領域をカバーしており、発表の内容も多岐に渡ります。特に印象的だった発表としては、ブラジルからの参加者(Luciano Se rgio Ventin Bomfim)による「人類生態学は学問領域なのか、パラダイムなのか」という発表、オーストラリアからの参加者(John Schooneveldt)による科学的思考に関する発表(メカニズム、システム、進化的ダイナミクスの3つの概念の区別の必要性について)、そして同じくオーストラリアの参加者(Eleanor Malbon)によるバウンダリースパナーズ(異なる領域をまたぎつなぐ者)のタイプ分けとスパナーズの負の側面についてなどが挙げられます。普段の活動の範囲では捉えきれない知見に触れることができた数日間で、研究への深い刺激を受けることが出来ました。

発表の様子(撮影:Christian De Castro)

オープニングの様子(撮影:河合史子)

会場であるフィリピン大学ロスバニョス校の様子(撮影:河合史子)

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