2018.1.15

レポート:「亀岡・地域の食と農の未来を考えるワークショップ」開催報告 (京都大学大学院 熊谷啓)

9月27日(水)、10月16日(月)、11月20日(月)の三回に渡り京都府亀岡市にてFEASTプロジェクトWG2主催 の「亀岡・地域の食と農を考えるワークショップ」が開催されました。WG2の秋津元輝(京都大学)、中村麻理(名古屋文理大学)、FEASTサブリーダー・上級研究員の田村典江を中心として、プロジェクトリーダーのSteven McGreevyと研究推進員の松岡祐子、岩橋涼(京都大学大学院)、そしてわたしの7名が携わり、亀岡市の農業、栄養指導、食品加工業など食と農の問題にかかわる様々な市民の方13名にご参加いただきました。

WG2 は、日本国内では京都府京都市、秋田県能代市を研究拠点としていますが、本年度より、京都府亀岡市での活動も本格始動しています。亀岡でも、食の市民ネットワークの構築、そして最終的には、ボトムアップな形で食に関する政策を立案するプラットフォームとなり得る日本版の「フードポリシー・カウンシル」(以下、FPC)「食と農の未来会議」の設立を目的としています。私たちの理想とする持続可能な「食」はどのようなものでしょうか。私たちが生きていく上でなくてはならない「食」とそれを生み出す「農」はどうあるべきでしょうか。また、その理想像を実現するにはどのようなステップが必要でしょうか。

能代、京都に続くこの亀岡では、食と農を総合的に考えていくための最初の一歩を描くために、「バックキャスティング(Backcasting)」という方法を用いて、ワークショップ(以下、WS)を行いました。バックキャスティングは、望ましい将来像からそこまでの方策を考えていく(バックキャストする)手法で、主にエネルギー政策の分野からその手法が広まりました。過去や現在の社会構造の延長線上に起こり得る未来を予測する従来のフォアキャスティングとは異なり、バックキャスティングは不確実な未来に対し、予測ではなく望ましい将来像を設定することから始まります。そして、その実現に向けた政策立案をするものであり、近年では国の長期計画や地域作りの手法としても注目されている手法です。亀岡市では、地域の食農問題に関わるステークホルダーが30年後の亀岡の「理想の食卓」を考え、それを実現するための最初の一歩を考えるという内容で行われました。

WS1回目(9/27)では「30年後の理想の食卓を考えよう」をテーマにFEASTプロジェクトの研究活動、食と農に関する課題が説明された後、13名の参加者がそれぞれの理想の食卓を描き、どんな特徴があるのかをグループ分けする中で考えました。描かれた理想の中には、家族と食べる、地元産の食材を使うといった内容から、片付けをするロボットや食材を短時間で取り寄せることのできるインフラといった今はないもの、それぞれが好きな食べ物を食べる、倫理的な消費など様々な視点が描かれました。

「未来を考えるってどういうこと?」をテーマにしたWS2回目(10/16)では、未来計画の講義を通して、理想を考えるには「自分」と現在からの「延長」で考えることをやめるという説明がされ、「地域やその市長として」「30年後の人になりきって」考えることが提案されました。また、1回目に話し合われたグループ分けを基準に参加者が3つのグループに別れ、講義を元にそれぞれのテーマに沿って地域の「理想の食卓」を描きました。メニューや食材をテーマにしたAグループでは旬や健康を意識したメニュー、人とのつながりをテーマにしたBグループのつながり食堂(コミュニティキッチン)、地域(経済・環境)をテーマに給食や農業への意識を考えたCグループなど、グループとして地域の「理想の食卓」を考えることで、だんだんと課題が見え始めてきています。

最終回となる3回目のWS(11/20)では、「亀岡の食と農の未来計画を構想しよう」をテーマに2回目で特に注目の集まったコミュニティキッチン(Bグループ)と給食(Cグループ)の話題を中心にその理想までの道のりをバックキャストしました。コミュニティキッチンではコンビニの様に地域内の各地に食堂があることを目標にそのための交通手段や食堂をコーディネートする人を育てる(おせっかいな人育成)などが、給食については亀岡では今できていない各校での給食供給や給食内容を支えるAI技術がどう関わっていくかなどが、理想の食卓から現在へと振り返る中で議論されました。

今回の亀岡のWSはこの3回でひとまず終了ですが、バックキャスティングを通して理想の食卓から現在の行動を考えることで、亀岡の食と農の未来を考えるための課題として「人とのつながり」や「教育(給食)」が見え、そのための一歩を考えはじめることができました。参加者からは「手法が楽しかった。「絵」というのがよかったと思います」や、「理想は現在からつなげていくものではなく…今現在の自分と切り離して考えることが大切」「計画すると言うことは大人にしかできないということを改めて気づかされ、30 年 後の未来を考えないと行けないなと思えました」といった意見が寄せられました。また2018年2月末には、WS参加者の要望から、はやくもWSの結果をもとに「第1回食と農の未来会議@亀岡」の開催が予定されるなど、今後も亀岡の動きから目が離せません。

未来計画の講義(WS2回目)(写真:熊谷啓)