2017.12.5

レポート:セミナー「長野市の食と農の未来‐市民の力でトランジションを起こすには‐」開催報告 (プロジェクト研究推進員 小林優子)

11月23日(木)に、地球研にてpeace flagプロジェクトと共に開催したシンポジウム「ファーマーズマーケットのあるくらし:持続可能な社会へのトランジション」(現在ブログ記事執筆中です!)を無事に終え、11月24日(金)は、新幹線と特急しなのを乗り継いで、長野出張に行ってきました。当日は、長野市にある権堂イーストプラザにて、FEASTプロジェクトリーダーのスティーブン・マックグリービーを講師とし、セミナー「長野市の食と農の未来‐市民の力でトランジションを起こすには‐」を開催しました。

FEASTプロジェクトは、日本国内では、京都府京都市・亀岡市、秋田県能代市を研究拠点としてきましたが、来年度より、長野県長野市での活動も本格始動します。長野でも、食の市民ネットワークの構築、そして最終的には、ボトムアップな形で食に関する政策を立案するプラットフォームとなり得る日本版の「フードポリシー・カウンシル」(以下、FPC)「食と農の未来会議」の設立を目的としています。私たちの理想とする持続可能な「食」はどのようなものでしょうか。私たちが生きていく上でなくてはならない「食」、そしてそれを生み出す「農」はどうあるべきでしょうか。また、その理想像を実現するにはどのようなステップ必要でしょうか。現在の日本(世界もですが)は、過剰生産や過剰消費に付随する問題や、食の主権の喪失、多様性ロス(遺伝、知恵、文化)といった問題を抱えています。更に、日本は、他国と比べてフードマイレージ(生産から消費までの輸送距離)が非常に大きく、特別世論調査によると国内食料供給能力の低下については、国民の83%が不安を抱いています。これまでも、政府、市民団体、個人レベルにおいて、食や農について、様々な取り組みがなされてきましたが、包括的に、つまり全体像を見渡したうえで解決策を見出す、メカニズムが確立されていないのが現状です。そのようなメカニズムのひとつが、1980年代に北米で始まった「フードポリシー・カウンシル」です。FPCでは、健康政策、都市計画、緑地計画、交通政策、福祉政策、住民間の交流、税制や規制のあり方、環境や農業問題などについて、地域の行政、市民/団体、事業関係者たちが話し合い、よりよい未来に向けた計画立案を行います。FEASTプロジェクトでは、このようなメカニズムを長野でも取り入れ、更には地域づくりを視野に入れた地域政策スキームとして活用できればと考えています。

今回のセミナーの目的は、長野の方々に、まずFEASTプロジェクトの研究活動、日本や海外における食と農に関する課題、その課題の解決に向けた食の市民ネットワーク(FPCやトランジション・タウン)といった海外の事例を紹介し、長野版「食と農の未来会議」設立の第一歩を踏み出すことでした。当日は、30名弱の方にご参加頂き、マックグリービーの発表後、質疑応答を行いました。参加者の方からは、下記のような質問が寄せられました。

‐FPCはどのような人が立ち上げるのか。

‐地方の高齢層は、企業の誘致が地域活性化を促進するという昔ながらの考え方を持っているが、どうやったら、そのような考え方を変えることができるのか。

‐九州のとある町では、危機感を共有することによって、生産と消費が回っているが、長野市で共有できる危機感は何か。

‐長野における食料供給圏(Foodshed)の距離感はどのくらいなのか。

‐消費者としてポジティブに食や農に関われる秘訣は何か。

‐長野でこのような活動を行う上でのスケール感はどのくらいか。

‐地域内で生産から消費までを回していくには、持続可能性が重要であるが、便利さやコストとはどのようなバランスを取るのか。

また、「地域の中における『つながり』の重要性について改めて考え直す機会となった」、「例えば1年のうちにどのくらいの時間を農業に費やすのか可視化する『指標』があればモチベーションにつながるのではないか」、といった声も上げられました。

長野では、今回に続いて、本年度内に5回程度セミナーを計画しています。来年度からは地域の食システムへの評価、マッピング、理想のビジョン作りも進める予定です。長野でも、消費者の声が、生産、流通、加工に反映される、如いては、食のシステムにおいて消費者が共同生産者のような地位を築くことのできる、より持続可能な社会へのトランジションに向けた輪が広がるきっかけとなればと考えています。次回のセミナーについても、決まり次第、Facebookなどで告知させて頂きます。皆さまのご参加をお待ちしています!

   (撮影:FEAST)