2017.6.19

レポート:食べ物と遊ぶ:ゲーミング・ワークショップ@京都(ユトレヒト大学 アストリッド・マンガス)

5月11日と28日に、FEASTではオランダ・ユトレヒト大学から訪問中の研究者(ヨースト・フェルフート教授と私)と一緒に、京都市内でゲーミング・ワークショップ「未来の京都の食事情」を開催しました。FEASTは、これまでにも京都市内や秋田県能代市にて、食の未来に関するワークショップを数回に渡り開催しており、今回のワークショップもその一環です。未来の理想像について想像をめぐらせ、シミュレーションをする手法にゲームを取り入れるのは、新しくもあり、参加者も楽しめます。今回のワークショップでは、参加者の皆さんに、①ビデオ・ゲーム、②カード・ゲームの2種類に挑戦してもらいました。このワークショップの成果として、私たちが注目していたのは、ゲーミング手法を用いることによって参加者はどのような影響を受けるのか、そしてゲームによって食の未来に関するどのような案が出されるのか、の2点です。

①のビデオ・ゲーム「LetsKyoto」は、オランダのユトレヒトにあるHKU University of the Artsのゲーム・デザイン科の学生が試作したものです。このゲームでは、参加者に、農家、レストラン経営者、スーパーマーケット経営者、消費者といった役割になってもらいます。そして、ロール・プレイング形式で、畑仕事、仕入れや買い物を通して、生産、流通、消費に関するさまざまな決断を下してもらいます。各ラウンドの最後に投票を行い、地域のより良い食のための政策を、プレーヤー全員で選びます。②のカード・ゲームは、フードポリシー・カウンシル(以下、FPC)のシミュレーションを行うためのものです。プレーヤーにはFPCのメンバーになりきってもらい、地域のより良い食のためのプロジェクト案を作ってもらいます。FPCとは、地域のフードシステムの生産や消費、流通、廃棄物管理といった異なるセクターを代表するメンバーにより構成される委員会です。それぞれの地域の持続可能で、より良い食を実現するために、地域計画やNPO/NGOと行政の連携などを、異なるバックグラウンドのメンバーが協力して進めていきます。FPCについては、FEASTのWG2が研究を進めています。

このビデオ・ゲームを通じて、参加者が食に関する活動について新しいアイディアや新しい関心を得ること、そしてフードシステムのなかでの自分以外の役割について理解を深めることが期待されています。もちろんゲームの効果は人それぞれで、参加者を対象とした事後アンケート調査では、フードシステムの働きについて理解が「非常に深まった」と回答した方もいれば、「ほとんどできなかった」という方もいらっしゃいました(ビデオ・ゲームそのものに馴染みのない方もいらっしゃったのかとも思います)。また、今回のワークショップを通じて、将来の実用化に向けたゲームの改善すべき点も明らかとなりました。

カード・ゲームでは、まず各プレーヤーは「自己紹介カード」に自身の職業を記入し、関心のあるテーマをリストの中から3つ選択します。次に、チーム内で自己紹介をして、関心の集まったテーマをもとにFPCのアジェンダを決めます。ファシリテーターがそれらを記録したところで、予算管理、書記、議論をとりしきるFPCの代表を任命します。FPCが活動できる状態になったところで、京都府の食に関するプロジェクトを立案します。各ラウンドは現実世界の1年間に相当し、FPCはラウンド毎に100万円を銀行から受け取ります。そして、持続可能な食のためのさまざまな実践事例が紹介されている「事例カード」3束(京都、日本、世界)から1枚ずつカードを引き、その事例を参考にしながらプロジェクトの計画を組み立てていきます。計画がある程度まとまったら、「活動内容シート」に記入し、それに見合った予算を割り当てていきます。ファシリテーターは、そのプロジェクトに対して評価値を定めます。メンバーは、評価値をあげてもらうために、嘆願(プレゼンテーション)することも可能です。評価値が決まったところで、プロジェクトの成否を決めるために、20面のサイコロAを振ります。「出た目の数x5」が評価値以下であれば「成功」とし、それ以上であれば「失敗」とします(例:プロジェクトの評価値が80点なら、16以下の目が出ればプロジェクト成功です)。「失敗」の場合には、失敗した原因と考えられることを挙げ、対応策を決め、さらにサイコロを振ります。これを「成功」となるまでくり返します。プロジェクトが成功した場合、そのラウンドは終了となりますが、その際にサイコロBを振ります。「1」の目が出た場合は、「災害発生」となり、もう一度サイコロを振り、どのような災害が発生したのか情報を得ます(土砂崩れや地震など、サイコロの目に応じた災害がリスト化されています)。次のラウンドでは、この災害に対応しなければなりません。ゲームが終了したら、各チームが自分たちのアジェンダと活動内容について発表を行います。成功したプロジェクト数が最も多いチームが、勝ちとなります。

カード・ゲーム後に、参加者の方々から多くの新しいアイディアを得ることができたという声が聞かれました。それぞれ異なる視点から未来について考えていることが分かった、また、地元の食材の需要が思っている以上にあることを知ったといったコメントがありました。FPCについて学んだだけではなく、将来的にFPCのメンバーとなる意欲も湧いたというコメントも頂きました。カード・ゲームの第2ラウンドでは、同じチーム内のメンバーと「自己紹介カード」を交換して、違う立場のロール・プレイングをしましたが、これにより、参加者の多くは自分とは異なる立場の役割についても視野を広げることができたと回答しています。

さて、どのようなFPCのプロジェクト案が出てきたのかという話に移りましょう。その数々のアイディアは、京都の食の未来により明るい展望を与えるものでした。カード・ゲームの最後には、ベスト・プロジェクトの投票を行いました。1回目のワークショップで最も得票数が高かったのは、子どもたちが年に四回お茶農家で実地体験をし、「茶の匠」になるというアイディアです。子どもたちは、自分たちが摘み取ったお茶を、お茶のフェスティバルで家族やその他の来場者に販売することにより、一連のバリュー・チェーンを経験することもできます。2回目のワークショップでは、地域認証ラベルを研究者と一緒に作るプロジェクト、そして学校菜園(エディブル・スクール・ヤード)と教育を融合した、数年に渡るプロジェクト案が最多票を集めました。予算上の制限が多かった1回目のワークショップとは異なり、2回目は予算の額を増額、また予算制限のないラウンドも設けたことにより、より想像力に溢れる案が出ました。例えば、「お野菜デート」というマッチング・サービスのシステム開発です。これは、消費者の生産地訪問によって消費者を野菜の生産者につなげたり、あるいは生産者を京都原産野菜の種子の保全につなげるといったさまざまなマッチングを促進する活動です。他には、シャッター街となった商店街に「子どもール」という複合施設を建設し、畑も併設し、あらゆる食に関する活動を促進するプロジェクトも立案されました。ここでは、子どもにしか利用権限のない子どもール限定の通貨を作り、子どもによる運営を図ります。このグループでは、親による子どもール通貨使用を防ぐ方法についてまで話が及びました。

今回のワークショップを通じて、新しい視点に、興味深い結果、そしてこれから考えるべきことについてもたくさんの案が生まれました。ご参加頂いたみなさま、本当にありがとうございました!

(和訳:太田和彦、小林優子)

ゲーミング・ワークショップのチラシ

ビデオ・ゲームに挑戦(撮影:アストリッド・マンガス)

カード・ゲームで、プロジェクト案を真剣に策定中(撮影:大賀百恵)

ベスト・プロジェクト投票中(撮影:大賀百恵)