2017.9.21

レポート:FEASTプロジェクト・リトリート:琵琶湖畔における省察 (プロジェクト・リーダー スティーブン・マックグリービー)

8月28日~29日に、第四回FEASTプロジェクト・リトリートを開催しました。今回は、滋賀県・琵琶湖のほとりでの開催です。リトリートは、FEASTプロジェクトの各ワーキンググループ(以下、WG)のチェア、エグゼクティブ・コミッティーのメンバー、そしてHQメンバーが集まり、研究の進捗報告、今後の計画や目標を話し合う重要な機会です。プロジェクト・リーダーの私にとっては、プロジェクトの様々なコンポーネントがどのように展開しているか、そしてどのように一つの「ストーリー」を創り上げるのか、研究の枠組みに忠実に進んでいるか(あるいは進化しているか)など理解するのに不可欠です。

メンバーの背景や研究に期待するものが混在してるため、学際的プロジェクトは時に円滑な実施が難しいことがあります。特に初期段階では、研究に関与する全ての人に納得のいく「共通言語」を創り上げるのに時間を要します。また、本プロジェクトの日本語と英語の二か国語を使用し、異なる文化的背景の人が集まっているという環境は、強みでもありますが困難を生むこともあります。特に何か混乱が起こった際に、その難しさは顕在化します。過去のリトリートは、参加者がお互いの理解を深めること、またそれぞれの研究計画を固めることに重点を置いていましたが、今年のリトリートでは、議論は非常に活発なものとなり、考えや手法を横断的につなぐことができたと考えています。

リトリート初日は、まずWGごとのグループワークとプロジェクト全体の進捗に関するオリエンテーションから始まり、各WGのプレゼンテーションとそれに関する議論へと続きました。二日目の朝には、各WGとプロジェクト全体の進捗状況を自己評価するためのエクササイズを行いました。このエクササイズは「ブラインド・サイド(Blind Side)」と呼ばれるもので、主にビジネスにおいて、経営に関する特定の要素の強みと弱みを明らかにするために用いられています。私たちは、「知っていると認識している(knew we knew)」、「知らないと認識している(knew we didn’t know)」、「知っていると認識できていない(didn’t know we knew)」、「知らないと認識できていない(didn’t know we didn’t know)」ことを明らかにするために実施しました。現時点で、プロジェクトを開始して一年が経過しましたが、状況に応じて変化を加えることは可能です。そのため、このエクササイズを通じて、各WGがそれぞれの進捗について省察し、どこに重点を置いて活動する必要があるのかを理解してもらい、気づいていないだけであって、実は自由に使えるリソースがあるということを認識してもらいたかったのです。このエクササイズに関する議論は、私の予想以上に長く、そして真剣なものとなり、今回のリトリートのハイライトとなりました。

今回のリトリートで挙がった今後検討すべき課題は、(1)指標の重要性、(2)新しいイニチアチブの創出、です。

(1)指標に関する課題:数ある環境影響指標について議論し、特定の指標を他のものより優先するのかについても話し合いました。各WGが共通の指標を使うことは、研究成果の統合に役立ちます。しかし、食べものの環境影響を評価するということは、それほど容易なことではありません。ターゲット(商品のライフサイクル、農業システム、食事と消費パターン、街と地域、等々)や評価基準が異なるからです。二酸化炭素排出量は代表的な指標で、広く研究で用いられていますし、本プロジェクトでも使っています。しかし、二酸化炭素排出量のみを見ても、全体像は見えてきません。水利用や生物多様性の指標もまた重要です。しかし、測定が難しいという課題もあります。今回、研究成果を統合するために指標一式を開発する必要があるかどうかについても話し合いを進めましたが、指標に関しては今後も検討が必要です。

(2)新しいインフォーマルな食料経済:すでに、シェア(共有)、仲間同士、オープン・ソース、連帯、食の共有財産化(commoning)といった要素を混ぜ合わせた「ニュー・エコノミー」の発展につながり得る、オルタナティブな食のシステムが生まれているという実例があります。また、食のニュー・エコノミーは、食料経済の「インフォーマルな」(言い換えると、非市場ベースの)要素につながっており、概して新しいというわけではなく、特定の営みや慣習に体現化されているような長い社会文化的歴史を有するものです。プロジェクトが成熟化するにつれ、さまざまなテーマや共通の関心事項を通じて、メンバーは各WGの枠組みを超え、横断的に研究を進め各々の研究内容を補てんすることができています。この新しくインフォーマルな食料経済についても、基礎的な調査、そしてシナリオやモデリングへの統合のため、WG1とWG3が協働し研究を進める流れが自然と生まれました。

この二日間は非常に生産的なものとなりました。特に、参加者が互いに積極的にコミュニケーションを取り、課題やそれぞれが思い入れのある研究について議論をしっかりできたことが印象深く残っています。

(訳:小林優子)

プロジェクト・リーダーによるオリエンテーション(撮影:FEAST)

各WGのチェアによる進捗状況発表(撮影:FEAST)

各WGに分かれたエクササイズの結果報告(撮影:FEAST)

原先生のドローンによる集合写真撮影の裏側(撮影:FEAST)

二日間お疲れ様でした!(撮影:原祐二)