2017.9.11

レポート:LCAアプリができるまで①ー2017年度第2回WG5会議 (プロジェクト研究推進員 松岡祐子)

2017年8月18日に、工学院大学新宿キャンパス(東京都新宿区)でFEASTプロジェクトのWG5の2017年度第2回ミーティングが行われました。WG5ではスーパーで手に取った食品が、原料の生産から流通の過程で持続可能性の問題にどれだけ関与しているのかを「見える化」するスマートフォン・アプリを開発しています。今回の会議では、8月末に開催されたFEASTのコアメンバー会議に向けて、このグループの研究計画及び進捗状況、今後の方針について話し合われました。

持続可能性の問題と一言でいっても、気候変動や汚染問題、多様性の喪失といったいわゆる環境問題だけでなく、不公平な価格での取引など上記の原因となるような構造的な問題や、生活習慣病など結果として生じている健康問題も含めると、規模も分野も異なる様々なものがあります。どれも問題としては有名かもしれませんが、私たち自身の普段の生活とこれらの問題がどうかかわっているのか知る機会はあまりありません。

環境問題との関連度を測る研究手法として、ある製品やサービスが生産から廃棄までの過程(ライフサイクル)で環境にどのような負荷を与えているのかを定量的に評価するライフサイクルアセスメント(LCA)という方法があります。LCA分析を通じて、製品がライフサイクルを通じて必要とするエネルギーや水の量、大気中に排出する温室効果ガス、酸性ガスの量、生態や人間に対する毒性や、生産によってもたらされる土地利用の変化などを指標化することができます。

FEASTでは、食品のLCAをはじめとする環境影響評価データを用いて、誰もが行う「買い物」の時に、スーパーで手に取る食料品が環境、社会、健康にどんな影響を与えてきたのかという情報を、手軽に入手できるような機会を作りたいと考えています。

欧米で運用されているこのLCAアプリを日本でどうやって実現するか―WG5では、WGチェアの稲葉敦教授(工学院大学)のもと、各分野のLCAの専門家や関連企業・団体からの参加者が集まって、様々な角度から検討し、着々と情報収集を始めています。例えば、食品っていってもどんなふうに分類するのか。アプリはどんなシーンで使うものにしようか。地域の個別事情を反映した場合にデータの整合性はとれるのか。手軽に情報にアクセスできるようにするにはどんな情報が必要なのか。

8月18日の会議でも、進捗状況の確認がてら、LCAデータがあまりない分野をどうするかや、販売時の新しいパッケージ技術の環境影響など話題になりました。また、地球研でインキュベーション研究「グローバルサプライチェーンを通じた都市、企業、家庭の環境影響評価に関する研究」を行っている信州大学の金本圭一郎先生による研究紹介もあり、計算手法やデータ利用についての質問が飛び交っていました。学校で習った逆行列はこういうときに使うのか!というのが、個人的に聞いていて面白かったです。

FEASTでは、現在私たちが直面している食と農に関する持続可能性の問題を、特定の何かのせいにするのではなく、私たち自身を構成要素として含めた食と農のシステムの構造によるものだと考えています。もしかしたら、このシステムの中でほどんどの人が、気が付かないうちに、或いは意図しないまま「実は未来を脅かしうる」選択を続けているだけなのかもしれません。分析を通じて、どんな事実がわかってくるのか、そしてアプリのデザイン案も、とても楽しみです!

 

  

(撮影:松岡祐子)