2018年 4月 24日

地域支援型流通の芽吹き (プロジェクト研究員 小林舞、マキシミリアン・スピーゲルバーグ)

FEAST HQ WG3, レポート

3月3~4日に京都府南丹市で開催された、第2回 農家大合宿『百姓一喜』に、FEASTからも研究員2名が参加させて頂きました。第1回目の百姓一喜はちょうど1年前に開催されており、イベント主催者の方々が京都オーガニックアクション(KOA:Kyoto Organic Action)を設立するきっかけとなりました。

私たちがイベントへの参加を確定できたのがぎりぎりとなってしまったのですが、すでに130名という予想を上回る数の参加希望があったにも関わらず、快く参加を受け付けてくださったKOAの主催者の皆様に感謝いたします。今回のイベントでは、京都のオルタナティブ(※)な食のシステムが直面するさまざまな課題や可能性についての議論が繰り広げられ、これらに対する知見を広げることができました。また、多くの参加者の方が、FEASTプロジェクトの活動内容に興味を持ってくださったことも、大変嬉しく思いました。

KOAが取り組まれているのは、遠隔の農村地から都市部への食材の流通です。イベント参加のため左京区から南丹市までレンタカーで移動したのですが、それが食材の流通が抱える問題に触れる第一歩となりました。移動時間のほとんどは、京都市内の渋滞を抜けることに費やすこととなりました。京都市外まで出ると、高速道路でものの約20~30分程度で目的地に到着しました。

今回のイベントの目的は、出来るだけ多くの京都近郊のオーガニック農産物の生産者、流通業者、販売業者に集まってもらい、共同での活動を増進すること、またKOAが「地域支援型流通(CST:Community Supported Trade or Transportation)」と名付けた、新しいスキームを整備することにあります。このスキームで言うオーガニックは、農薬や化学肥料を使用する農家を除外することもなければ、日本農林規格(JAS)の有機規格認定を受けた農家のみに固執するものではありません。現在のところ、国際有機農業運動連盟(IFOAM:International Federation of Organic Agriculture Movements)のオーガニックの定義にある様な、「土壌・自然生態系・人々の健康を持続させ、[…]関係するすべての生物と人間の間に公正な関係を築くと共に生命(いのち)・生活(くらし)の質を高める」という目標に向かって活動するネットワークを指しており、可能な限り包括的性質を持とうとしています。

KOAというイニシアチブに至った背景には、数年におよぶさまざまな出来事と要因があるでしょう。しかし、去年の暮れに宅配料金が値上げしたことが拍車をかけたと言えます。京都のみならず、日本国内全域の生産者や販売業者の方たちは、規模が小さいほど、利便性の高い宅配サービスに頼るという傾向がありました。その中で、一般的にオンラインショッピングが急増したことが引き金となり、宅配料金は値上げされ、小規模な生産者や流通業者は打撃を受けることとなってしまいました。また、小規模農家にとって、既存の流通システムでは、利幅が少ないという課題もあります。例えば、「道の駅」のような直売所では、年金や退職金があるため特別利益を得なくてもよい生産者と価格競争しなければなりません。更に、農業協同組合(JA)の規格を満たさず、その流通経路を利用できない農家や、参加しないという選択肢を選ぶ農家は、多様な取引先への出荷で多くの時間がかかってしまうという負担もあります。この度KOAが提唱しようとする物流スキームは、理論上では、このような問題に直面している農産物の小規模な取引を合理化できるものです。

「喜びの一揆」とも呼ぶべきイベント第1日目には、約110名に上る方々が参加されました。主催組織には、「京都」とついていますが、奈良、滋賀、兵庫、福井、大阪、三重からの参加者もいらっしゃったことからも、行政上の境界や、競争相手であるという関係性は考えず、このようなネットワークで協力して活動していくことの可能性が見て取れました。長期的な目標は、さまざまな地域で応用可能な地域支援型流通システムを確立することですが、その第一歩として京都府内でプロトタイプとなるシステムの確立を目指しています。

このような背景から、イベントには京都で野菜の販売に携わる方々の中でも、特に精力的に活動されている方が数多くいらっしゃいました。KOAは、369商店の鈴木健太郎氏、アスカ有機農園の伊原彰康氏が、互いのビジョンに共鳴したことがきっかけとなり、立ち上げに至りました。その後、地元野菜の流通に取り組む株式会社坂ノ途中の小野邦彦氏、そして伊賀ベジタブルファーム株式会社の村山邦彦氏が加わったほか、Mumokutekiの廣海緑郎氏も主要メンバーとして活動されています。今回の2日間に渡るイベントでも、こちらの方々が先陣を切って議論を進めていました。KOAの中心人物がこのような背景を持った方々であったこともあり、1年目の活動は農産物の販売事業主を中心に展開され、翌年に農産物の取扱量を増やすことを目指しました。こうして、京丹後市の有機農家の梅本修氏大原音吹く畑の高田潤一郎氏を始めとするオーガニック農家の方々もKOAの議論に参加される運びとなりました。第1日目のプログラムは、この新たなシステムの生産分野に焦点を当てたもので、約10名のグループに分かれ議論を進めました。課題は、農家が実際に直面している課題の本質です。具体的には、農家の高齢化、不効率な土地利用、オーガニックを定義する意義、消費者の需要の特定、更には、健康的な食材を提供するはずである生産者自身の健康状態が乏しいという矛盾した現状などに及びました。他には、京都にて約半世紀に渡り環境問題に取り組んできた非営利団体使い捨て時代を考える会の方々、京都の自然食品スーパーHELPの方々の顔ぶれも見られました。また、デパートなどでマルシェ形式での販売スペースの立ち上げを、大企業と共同で計画している方などもいらっしゃいました。

イベント第2日目は、KOAの発案から1年間目の活動状況について報告されました。これまでに、京都府からの助成を受けて、京都府内4か所(丹後、綾部、福知山、和知)に集荷ポイントを設置しています。また農林水産省の助成で、生産者と仕入れ業者が連絡調整を行うためのオンラインシステムの開発を始めました。現在、オンラインスプレッドシートに農家さんが品目、出荷量、価格といった基本情報を入力するシステムを利用して、試験的に運営されています。

運営者の方々は、先に述べた生産者の方々の直面する課題とは、異なる課題を抱えていました。まず課題として挙げられたのは、助成金の使用用途に関する制約があり、今後の出荷量が予測できない中で、運送用トラックを購入する必要があるという点です。次に挙げられたのは、オンラインシステムに商品を登録する際に、システム上のメンバー全員に情報が公開されている点です。情報公開は、生産者間の調整を増進し、出回っていない農産物の生産を後押しするといった目的で実施されていますが、その一方で価格競争を招いてしまう場合もあります。例えば、人参を生産している農家AさんとBさんがいるとします。オンラインシステムに、Aさんが販売価格を250円と入力すると、その情報を見たBさんは300円での販売を希望していたとしても、価格の見直しを余儀なくされるかもしれません。他にも、運送費に関する課題もあります。対策としてまず考えられるのは、輸送ネットワークの共有化(シェアリング)です。例えば、京都北部と中心部を結ぶルートを走る他社のトラックで、積み荷が最大積載量の半分であれば、残りの空いている半分のスペースを活用するというものです。アプリを利用した食料品のためのウーバー(自家用自動車の配車サービス)や典型的なシェアリングエコノミー(共有経済)形式のスタートアップのようなものだと考えたら良いでしょうか。この輸送ネットワークが拡大していけば、あらゆるスケールの生産者や販売者がシステムに参加できるための受け皿が必要となります。裏庭で少量の野菜を作っている人、何トンものピーマンを生産する農家、野菜セット20箱を配達する八百屋さんや、HELPのような規模の大きいスーパーなど、規模も性質も異なってきます。このような課題を鑑み、KOAは、今後より多くの地域のフードチェーンに関わるステークホルダーの方々に参加頂きながら、システム自体の改善を行い、そして経済的な利益も生み出せるような形を目指されるとのことでした。

また、KOAにとっての次のステップは、この集荷・運送に関する活動の組織化だそうです。また、商品管理についても、関係者の方たちが簡略的、また効率的に連絡調整ができるよう、アプリの開発も進めています。最終的には、坂ノ途中さんのFarmOのウェブサイトにリンクする形で、ひとつのインターフェイスで日本各地の有機農家をつなげることを目指すという計画です。

私たちFEASTプロジェクトは、地域支援型流通という新しく芽吹いた概念に関する議論に参加していくこと、そして、そこから始まる新しい出会いやさまざまな可能性を関係者のみなさまと共同で探っていくことを非常に楽しみにしています。このような取り組みが整備、調整されていく中で、卸売市場、JAそして自然食品に特化した生協組織といった既存のネットワークとどのように違ってくるのか。フード・ハブフード・ネットワークといった世界の取り組みからどのように学び、京都に合った取り組みを組み立てていけるか。似たような意志の高い消費者以外の人たちをどのように巻き込み、より広い社会的な影響を与えることができるのか。農家や消費者が「食の主権」を、(再び)手に入れる、または保持していくための、真の意味でのオルタナティブな筋道となり得るのか。そして、世界のアグロエコロジー運動で理想とされている、人道的であり、生態系の再生を後押しするような食の生産と消費を実現するための一環となり得るのか。こういった課題を問いながら、この京都で始まった一喜(一揆)から生じるダイナミクスに参加させて頂きたいと考えています。イベントを企画してくださったKOAのみなさま、そして新しい知見をくださった参加者のみなさま、ありがとうございました!

※英語のAlternativeは日本語では代替的と訳されることが多いが、「新しい」、「挑戦的な」、「より良い」といったニュアンスが含まれる。

(和訳・校正:小林優子)

(撮影:KOA)

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