2017年 12月 13日

第一回地球研・UCB共同国際ワークショップ「Food, Agriculture, and Human Impacts on the Environment: Japan, Asia and Beyond」参加報告 (プロジェクトリーダー スティーブン・マックグリービー)

FEAST HQ レポート

去る11月6日~7日に米国カリフォルニア大学バークレー校(以下、UCB)にて、総合地球環境学研究所(以下、地球研)とUCBの交流協定締結を記念した第一回共同国際ワークショップ「Food, Agriculture, and Human Impacts on the Environment: Japan, Asia and Beyond」が開催されました。FEASTからは、サブリーダー・上級研究員の田村典江、研究員の小林舞およびクリストフ・ルプレヒト、メンバーであり地球研准教授のダニエル・ナイルズと、私の5名が参加しました。ワークショップは8つのセッションから成り、キャンパス内の会場にて行われました。

FEASTは、ワークショップの第1部「Food and Agriculture(食と農)」の3つのセッション「Urban Biocultural Food Production and Food Security(都市部における生物文化的食の生産と安全)」、「Organic Agriculture and Scale: Balancing Environmental and Consumer Demands(有機農業とスケール:環境要求事項と消費者需要のバランス)」、 および「Food Policy Supporting the Future of Sustainable Agriculture(持続可能な農の未来を支える食料政策)」の企画・運営に携わりました。バークレー・フード・インスティチュート(以下、BFI)ニーナ・イチカワ氏羽生淳子教授(UCB人類学部教授、元地球研プロジェクト・リーダー)と綿密に連携し、FEASTとUCB両方の研究者にとって興味深く、統合的なテーマをまとめました。ご心配なく!両者が惹きつけられる共通のアイデアはたくさんありましたから、非常に実りのある議論につながりました。

FEASTからは、まず私がローカルな食の安全評価に関する考えが時の流れと共にどのように変化していったか、また空間的距離を埋め、プラネタリー・バウンダリーのような持続可能性の絶対的な評価基準を統合した包括的枠組の必要性について発表しました。続いて、ルプレヒト研究員からは、生物文化的なシティースケープ(都市景観)の重要性について、つまり生きた食の生産のランドスケープ(景観)は、生産や自然の生息環境の範囲を超えて文化的にも社会的にも恩恵をもたらすものであるという発表がありました。小林研究員は、ブータン王国では開発と農業の近代化のための取り組みが、農産物の100%オーガニック化を進める政府の取り組みと、農民との間に大きな亀裂を生み出している事例を紹介しました。田村上級研究員は、日本における「食」は、国レベルではモノとして、地方政府レベルではコモンズ(共有財)として捉えられているため方向性に乖離が生じており、それが各々の農業政策に反映されているという研究成果を発表しました。最後に、第2部の「Heritage and Human Impacts on the Environment(文化遺産と人類の環境への影響)」のセッション4「Landscape, Materiality & Traditional Ecological Knowledge(ランドスケープ、物質、伝統知)」にて、ナイルズ准教授が、長期的に持続可能な人間と環境の相互関係を示すものとしてのアジアの農業遺産の重要性について、そしてアンソロポシーンの課題を再解釈する上でのその役割について発表しました。

UCBからは、ミゲール・アルティエリ名誉教授(環境科学政策マネジメント研究科)とクララ・ニコールズ博士(SOCLA:アグロエコロジー中南米科学協会)より、アグロエコロジーと食の主権の重要課題と、小規模な家族経営の農家が新しいアグロエコロジー運動をどのように推し進めているかについて、ご発表頂くことができました。また、ジェニファー・ソワーワイン博士は、イースト・ベイ地区にて生物多様性、食の安全やその他の豊かさをもたらすより広域なアグロエコシステム(農業生態系)の一部として、食の文化多様性が拡大してきているという研究成果を発表しました。クレア・クレメン教授は、農家レベルでの有機農法や生物資源の多様化が、生態系サービスや地上、地下両方における生産活動に資するものであるとお話しされました。続いて、村本譲司博士(カリフォルニア大学サンタクルーズ校)は、カリフォルニアの20億米ドル(約2,270億円)に上る有機イチゴ産業の詳細な分析結果と、これまでの土壌燻蒸をanaerobic soil disinfestation(土壌還元消毒)が取って代わっているという研究を報告されました。ジュリア・ヴァン・ソーレン・キム氏とソワーワイン博士は、カリフォルニアにおるフードポリシー・カウンシル(以下、FPC)設立に関する複数の詳細な事例と、FPCがローカルな食のシステムの課題に取り組むために、どのように関係性や情報を活用しているかを紹介されました。そして、イチカワ博士と、アダム・カロ氏は、アメリカの農業法案の中で、新規就農者を支援する政策について、また社会的に恵まれない農家の関わりを強めるためにはどのような政策改善が必要かについて考察、発表しました。

また、その他にも、ローラ・モレノ氏の家庭レベルでの食品廃棄物に関する発表や、BFI事務局長のアン・シュラップ氏のBFIの研究活動で用いられている超学際的手法に関する発表は、特に興味深いものでした。また、その他の発表は、食と農に留まらず、アジアのあらゆる地域にて、人々の闘いや現代社会のプレッシャーとの衝突といった文化的側面から迫った事例や、公正で持続可能な形で居住空間を設計する方法や自然資源を利用する方法についてなど幅広いものでした。

最後に、バークレーの街ですが、特に「食」に興味を持つ人にとっては、やはり素晴らしい場所であるなという印象を持ちました。都市農園や緑地の使い方は、着想を得られるものでしたし、有名なバークレー・ボウル(個人経営のスーパーマーケット)は一旦足を踏み入れると、帰りたくなくなるほどでした。キャンパス内のWomen’s Faculty Clubでのランチも素晴らしいものでした。また次回訪れることができれば、と思っています。

(訳:小林優子)

スティーブン・マックグリービーによる発表(撮影:田村典江)

(撮影:クリストフ・ルプレヒト)

地元の食品を取り扱うスーパーマーケット「バークレー・ボウル」(撮影:クリストフ・ルプレヒト)

コミュニティ・ガーデン①(撮影:クリストフ・ルプレヒト)

コミュニティ・ガーデン②(撮影:クリストフ・ルプレヒト)

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