38café(みつばち・カフェ)を開催しました。—京都を「ミツバチに優しい街」にするための政策提言にむけて(プロジェクト研究員 マキシミリアン・スピーゲルバーグ&真貝理香、上級研究員 クリストフ・ルプレヒト、真貝理香)

FEAST HQ WG3, セミナー、ワークショップ, レポート

去る2月27日に、京都のミツバチ「関係者」の方々の参加を得て、38 Café(ミツバチ・カフェ)「みつばちにやさしい街・京都」を開催しました。実はミツバチの問題は、養蜂家の方だけの問題ではなく、ミツバチによって直接的・間接的に影響を受けるすべての人を含みます。例えば、作物の受粉を必要とする農家の方も、野鳥や昆虫の好きな方も、蜂の巣除去に携わる方も、食べものや環境問題について教える教育関係者の方も、すべてが「関係者」なのです。今回の38 Caféは、こうした多様な背景を持つ関係者の方々にと一緒に、将来的な政策提言を見据えた具体策を考えることを目的としました。

国際的に見ても、ミツバチを始めとする花粉媒介者(ポリネーター)、そして昆虫全般の喪失に対する懸念が広がっており、様々な政策立案へとつながっています。例えば、オバマ前米国大統領は、2015年に「National Strategy to Promote the Healthy Honey Bees and Other Pollinators」(ミツバチなど花粉媒介者の健全性促進のための国家戦略)を採択しました。他にも、オランダ・アムステルダム市(Earthwise; BeeCareAmsterdam)を始めとし、世界各国の多くの町でミツバチの増加戦略やミツバチに優しい政策が策定され、それに沿った取り組みが進められています。また、市民団体もミツバチのための活動を繰り広げています。ニュージーランド・オークランド市のプロジェクト「For the Love of Bees」代表のSarah Smuts-Kennedy氏は5月~6月にFEASTを訪問予定です。日本では、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所が、花粉媒介者を守り、送粉サービスを維持するための10の政策を提言し、国際社会への提言としても貢献しています(Dicks et. Al. 2016)。

総合地球環境学研究所のミツバチ研究グループは、これまで京都をはじめとする国内、台湾などでミツバチと人間との関わりを調査し、ミツバチや養蜂に関する活動や政策について情報を蓄積し、第23回地球研地域連携セミナーなどのイベントで成果報告を重ねてきました。こうした調査研究の中から、「みつばちにやさしい街・京都」構築に役立つと考えられる以下の6つのベスト・プラクティス事例を、討論のテーマに選定しました。

  1. 環境への意識啓発・環境教育
  2. 農薬不使用ゾーン
  3. 屋上緑化・緑地を増やす(ミツバチのハイウェイ)
  4. ミツバチ・ホットライン(分蜂時のミツバチが駆除されることのないよう、市民と養蜂家のネットワークをつくる)
  5. ミツバチ・ポリネーター用「花の種ミックス」
  6. 養蜂したい人と場所のマッチング

前述したように、ミツバチの関係者と一概に言っても、多様なバックグラウンドの方々がいます。そうした皆様の交流の一助となることを目指し、今回は、ワールドカフェ形式のワークショップを企画しました。予想を上回る38名の方々にご参加頂き、前述のテーマが1つずつ割り当てられた6つのグループに分かれ、地球研のFEASTプロジェクトオープンチームサイエンスプロジェクトなどの研究員6名がファシリテーターを務める各テーブルにて、割り当てられたテーマについて、以下の順序で議論を行いました。

  • 1ラウンド:京都においてこれらを実行するにあたっての障害・問題は?
  • 2ラウンド:問題を解決する方法は?
  • 3ラウンド:問題解決・実行するのは誰?関係者・関連機関?

リラックスした雰囲気の中、参加者の皆さんはミツバチが、花々をまわるように、ラウンドごとにテーブルをまわり議論を交わしました。ワークショップ終了時には、各テーブルごとに、議論の成果を発表し、その報告内容をグラフィックレコーダーの谷口彩氏に、ポスター化して頂きました。

複数のテーマを話しつつ見えてきた共通項は、日本では「ミツバチは怖い」というイメージが先行しがちであり、どの項目を実行するにせよ、ミツバチやポリネーターに対する正しい知識や意識の低さが障害となるため、ミツバチの重要性を啓発する必要があるという①教育の問題でした。ミツバチの分蜂(巣別れ)の情報も、一般には馴染みがなく、また農薬についての知識も必要であるという意見も出ました。ミツバチに関する教育として、学校はもとより、実際に養蜂の事例を見てもらうことが効果的であり、イメージアップとして、ドラえもんなどのアニメで伝えてもらうのもよいのでは?といったユニークな意見も出ました。また、公共用地の農薬不使用ゾーンの設定や、緑化活動においては、②行政と市民との連携は不可欠であり、京都市内にも空き地はあるので、行政を巻き込んで緑化利用はできないか?街路樹や公園の管理は、街路樹の剪定のしかたによって、害虫がつきにくい方法があるという専門的な意見も出されました。Mまた、公有地に農薬禁止区域を設けてはどうか?花の種ミックスや緑化については、スポンサーつきの花壇、京都ならではの在来種の花の種をまぜたミックスはどうか?ガーデニングが趣味の人は一定層いるので、その人たちへの働きかけをしていきたいという意見もありました。

これらのことを実行に移すのは、③予算と人手が必要になります。クラウドファンディングや、ふるさと納税の活用、企業とのタイアップや、一般の人が気軽に参加しやすい環境・組織づくりが重要になってきます。
今後の活動としては、トウヨウミツバチの生息する台湾や韓国への調査地の拡大の他、日本国内での研究を以下の5点において掘り下げることを考えています。

  • 「持続可能な開発のための教育」(ESD)、企業の社会的責任(CSR)、そして地域開発において都市養蜂プロジェクトがどのような役割を担うか(担っているか)調査を進める。
  • 農村部における伝統的・近代的な養蜂技術を記録、分析し、さまざまな有機農業、山間部の地域経済や山間部の未来のシナリオと養蜂が創り上げるダイナミクスについて理解を深める。
  • ミツバチの巣箱やミツバチ産品を、ランドスケープ(景観)指標として取り入れる。
  • 都市部・農村部双方において、ニホンミツバチも含めた、フード・ウェブ(食物網:food web)を概念化する。
  • ミツバチ・ポリネーター用「花の種ミックス」の可能性について、さらなる検討を行う。

(一部和訳&校正:Yuko K.)

(撮影:FEAST)