アメリカ地理学会2018年大会@ニューオリンズ(プロジェクト上級研究員 クリストフ・ルプレヒト)

FEAST HQ WG1, WG2, WG3, レポート

毎年開催されるアメリカ地理学会(以下、AAG)の2017年ボストン大会では、FEASTは食のシステムの転換に関する5つのセッションをオーガナイズしました。ニューオリンズで開催された2018年大会にも、引き続きプロジェクトメンバーと参加してきました。この年次大会は、多岐に渡る分野の研究者が述べ9000名も参加する規模のもので、そういった方々にお会いし、お話しを聞き、自らも発表する絶好の機会を逃すわけにはいきませんでした!

都市における食の生産のマッピング

食のシステムのローカル化は、生産地と消費地の隔たりを埋める一つの手段と言えます。都市農業や家庭菜園から、パンに関するローカルな食のシステムについて、2つのセッション(Mapping Urban Production I, II)をオーガナイズし、京都、マニラ、デトロイト、カルガリー、ミネアポリス・セントポール都市圏、そしてグルノーブルからの事例研究を紹介しました。このセッションを通じて、都市農業に研究者が担う重要な役割やもたらす希望は、都市農業に従事する人たちによって実現されていることが明らかとなりました。しかし、その一方で、それを支える政策上の枠組みが欠如している点も明らかになりました。この2つのセッションは、私とFEAST研究員のマキシミリアン・スピーゲルバーグでオーガナイズし、FEASTメンバーである小田龍聖(京都大学)と原祐二(和歌山大学)も発表を行いました。

インフォーマルな食のシステム:非公式、非金銭的、オルタナティブな食の実践

あなたにとって特別な食べものとは何でしょうか。スーパーマーケットやコンビニで購入することのできない食べものでしょうか。例えば、おばあちゃんの手作りジャムやお漬物、友達におすそ分けしてもらった果物、何かのお礼にもらったハチミツ、コミュニティガーデンでご近所さんと一緒に育てた野菜などを思いつくでしょうか。これらは、全てインフォーマル(非公式)な食べものと言えます。こういった食べものに注目すると、食べものはただの商品(commodity)に留まらず、意味や物語を持つものだと思い出させてくれます。インフォーマルな食に関する実践は、多様性に富んでおり、また日常にありふれた光景である一方、「食の安全」や「持続可能な消費と生産」について議論を展開する際に見逃してしまいがちです。また、統計学的データが少なく、インフォーマルな食に基づく幸せは測ることが困難です。

そこで、FEASTではインフォーマルな食に関するワーキンググループを新規に立ち上げ、それが今回のAAGでのセッション(The other food system(s): informal, non-monetary and alternative food practices)にもつながりました。まず、第一セッションでは、食、アメリカ、日本、ドイツにおけるコミュニティガーデンへの様々なアプローチ、インフォーマルな食と食の安全、インフォーマルな食の実践のけん引役としての楽しみ(enjoyment)の観点から、インフォーマリティを取り巻く複雑な理論について学びました。続く、第二セッションでは、ブータンのフードシェアリング、日本の種の保存、フェミニストのケア概念の観点から見たバーモント州とニューハンプシャー州における落穂拾い、ウエストバージニア州の野生植物・鳥獣肉の採取に関する事例研究について発表がありました。最後となる第三セッションは、日本の都市養蜂、公有地における農作物の収穫、バヌアツ共和国における食に基づく親族ネットワーク、農業訓練に関する研究成果の発表でまとめました。私、プロジェクト研究員の小林舞、メンバーの河合史子(オーストラリア国立大学)で、この3つのセッションをオーガナイズ、発表した他、プロジェクト研究員の太田和彦、マキシミリアン・スピーゲルバーグ、また、研究協力者の新保奈穂美(筑波大学)も発表を行いました。

人間を超えた、ポストヒューマン的探究とミツバチの地理学

上記の2種のセッション以外をオーガナイズした以外では、AAGはインスピレーションを受けることのできる場所であると改めて感じました。特に印象に残ったのは、人以外の労働の概念や、遺伝子編集が可能となったこと、更には腸内細菌に気分が影響される時代にいるということを認識させられる、人間を超えた(more-than-human)地理学のセッションや発表です。特に、スピーゲルバーグがパネリストとして参加したミツバチの地理学に関するパネルディスカッションでは、人間を超えて複雑に絡み合う要素について考えるのであれば、私たち人間が世界中で何世紀にも渡り、共に暮らしてきた種に着目するのが最善の方法ではないか、ということに考えがおよびました。人間を超えた探究は、来年ワシントンD.C.で開催される年次大会でも引き続き議論されるでしょう。また、来年お会いしましょう!

(和訳:Yuko K.)

Welcome to AAG 2018!(写真:クリストフ・ルプレヒト)

小田龍聖による京都の土地利用に関する発表(写真:クリストフ・ルプレヒト)

シンギング・オーク(The Singing Oak)(写真:クリストフ・ルプレヒト)

レストラン1000figsでFEASTです!(写真:クリストフ・ルプレヒト)

ニューオリンズで有名な蒸気船Natchez(写真:クリストフ・ルプレヒト)