鹿児島大学シンポジウムで人新世とトランジション・タウンの取り組みについて紹介(プロジェクト研究員 太田和彦)

FEAST HQ WG2, シンポジウム, レポート

7月6日に鹿児島大学郡元キャンパスで開催された、産学官連携シンポジウム「鹿児島のこれからをどう生きるか考える―人新世時代の環境倫理―」で、人新世やトランジション・タウンの取り組みについてご紹介してきました。鹿児島大学法文学部の学生さんの他、一般の方の聴講者も多くいらっしゃいました。

シンポジウムのサブタイトルにもある「人新世」(Anthropocene)については、すでに地球研の他のイベントなどで、見聞きしたことがある人もいらっしゃると思います。人類が農業や産業革命を通じて、小惑星の衝突や火山の大噴火に匹敵するレベルの地質学的な規模の環境変化をもたらしたことを表わす言葉です。特に、この20世紀後半からの「大加速」(Great acceleration) と呼ばれる急激な活動領域の拡大は、気候変動や生物多様性の喪失、窒素とリンの過剰放出、マイクロプラスチックによる海洋汚染などの問題を深刻化させています。

この状況の緩和と適応に際しては、新しい科学技術の開発だけでなく、国や自治体の政策、企業や市民の参画、経済活動と施策の両立、私たちが現在置かれている状況の適切な認識と記述などの総合的な視野とデザインが求められることとなります。そのため、今回のシンポジウムでは、鹿児島大学の近藤和敬さんによる「人新世」という枠組みの概説、同じく鹿児島大学の菅野康太さんによる「トランスサイエンス」という問題の種類の概説、鹿児島市環境政策課の森智美さんによる鹿児島市のクールチョイスの取り組み、プランニングディレクターの市村良平さんによるコミュニティデザインの実践例、合同会社ダイバーシティの奥大輔さんによる近年のリサイクル技術のご紹介などを含む、分野横断的なパネルディスカッションが行われました。

私からは、人新世におけるコミュニティ・ビルディングを考えるヒントの一つとして、「トランジション・タウン」(Transition town)の取り組みをご紹介しました。トランジション・タウンは「脱依存」をキーワードにした世界的な市民活動で、食料、エネルギー、住宅やインフラの補修、看護・介護を化石燃料や巨大企業に依存せずに、それぞれの地域内に供給できる街づくりを目指したさまざまな取り組みを行っています。完全な自給自足ではなく、「漏れバケツ」に喩えられるように、地域の富が必要以上に外に出ないことが目指されます。

今回は、トランジション・タウンの取り組みが最初に始まったイギリスのトットネス地方の事例を中心にご紹介しました。このトットネス地方で活動する慈善団体「Transition Town Totnes」では「バケツの漏れ穴を小さくする」ことの経済効果を、さまざまなデータに基づいて推計し、報告書を刊行しています。その報告書を、FEASTプロジェクトで邦訳しました。Transition Town Totnesの許可を得て、下記に掲載します。

報告書『地域経済の青写真:トットネスおよび周辺行政区』

原本『Totness&District Local Economic Blueprint』

※ 邦訳で文章の読みにくいところ、意味がわかりにくいところなどありましたら、お気軽に太田(otakazu[a]chikyu.ac.jp:[a]→@)までお知らせください。

(写真:菅野康太氏)

(写真:菅野康太氏)

(写真:菅野康太氏)