日本有機農業研究会:給食分科会(同志社大学、当時・FEAST研究推進員 岩島史)

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2月23日に滋賀県のアヤハレークサイドホテルで日本有機農業研究会が開催され、WG2チェアの秋津元輝教授(京都大学農学研究科)と研究推進員の岩島史は、午後の分科会「子どもの給食をオーガニックに」を担当しました。定員を超える30人以上の参加があり、にぎやかな会になりました。

分科会ではまず、秋津教授が「給食からの食改革」と題する報告を行い、こどもが食べる安全・おいしい給食というだけではない、学校給食のもつ広く社会的な意義を指摘しました。学校給食を公共的な食料調達として考えてみると、大量に調達する必要があることで、地産地消にすれば地域農業の支援や地域経済の循環、オーガニック給食にすれば農家の販売先の確保になること、学校給食という公的な場でオーガニックを取り入れた場合はオーガニック農産物が地域の人にも身近に感じられるなどの社会的効果が期待できること、公的なとりくみであるために、国の政策や地域の条例などの集権的な意思決定で変化を起こせること、学校給食を通して次世代と親たちへの教育効果が期待できることなどが紹介されました。海外には実際に社会を改革する方策として学校給食を変えてきた例もあります。このような先例を参照すると、学校給食にオーガニックを取り入れることは、地域農業、環境、食文化、健康といった問題だけでなく、貧困と食の格差問題、食と農の乖離、労働問題、流通チェーン、科学技術といったことがらにも影響を与えることができると話されました。

次に、枚方・食品公害と健康を考える会の末永博子さんが、給食を食べる子どもをもつ親の立場から枚方市と近隣の市町村の現在の学校給食について話をしてくださいました。以前はあまり給食に関心が強くなく、子どもの献立表を見ることも少なかったそうですが、今回の発表のために子どもがいる友人に話を聞いたり、自分の子どもに給食の話を聞いたり、学校給食センターに見学に行かれました。末永さんの住んでいる交野市では、以前は各学校で給食を調理していたのが、3つの学校給食センターになり、現在では1つの大型センターに統合されています。1日に7,000食を調理していて、オーガニック農産物はコストの問題から導入される予定はないそうです。野菜や米は地場産のものがあれば使う方針で、ご飯の6割程度には地場産の米が使われています。枚方・食品公害と健康を考える会が長年活動を続けている枚方市では2つの学校給食センターと28の自校調理でつくられていて、味や質の評判が交野市より良いようです。おなじく近隣の箕面市では小学校・中学校ともすべて自校調理で作られていて、地元農家から農産物を募集し、献立も集まった農産物にあわせて考えられているようです。このような差が生じているのはなぜか、交野市の学校給食センターにオーガニックを取り入れてもらうのは無理なように思えるが、どこにどのように働きかけたら良いのか考えた結果、現状を知り、気付き、変えたいと思う人を増やすことが良いのではないかと話されました。末永さん自身が今回の発表を通して新しく現状を知り、気づくことがあったように、家でオーガニックを食べているのになぜ学校給食にはないのかと子どもが気づくこと、子どもと食について話すこと、枚方・食品公害と健康を考える会の活動を通して一緒に考える仲間を増やすことが大切なのではないかと話されました。

最後に給食にオーガニックを取り入れている浦堂認定こども園の濱崎心子さんが園での取り組みを紹介してくださいました。高槻市にある浦堂認定こども園では、副園長の濱崎さん自身の妊娠時の経験をきっかけに10数年前から食べ物にこだわった給食や教育を行っています。農家出身の保育士さんに習いながら園庭で野菜を育てたり、子どもたちが食べる1年間の味噌は一緒につくったり、食べ終わった種や骨をつかって遊ぶほか、夏祭りで販売する綿菓子をグラニュー糖ではなく粗糖でつくったり、有機野菜をとりあつかう安全農産供給センターのジュースを原価より安く販売して、子どもとその親たちに「ほんとうの味」を知ってもらうようにしています。添加物の多いハムやベーコンを使わない、牛乳を使わないなど、給食の先生がすぐに受け入れてくれないこともあったそうですが、こつこつと取り組みをつづけておられます。

その後の質疑とディスカッションでは、まず、オーガニックや持続可能な社会といった言葉にはだれでも賛成するが、明日のことしか考える余裕のない人々を切り捨てることになるのではないかという質問がでました。それに対して、別の参加者は、自分は母子家庭で子どもを育ててきて所得に余裕はないが、だからといって食べ物に気を使わないわけではないこと、その一方でお金に余裕がないという人もビールやお菓子にはお金を使っている傾向があり、そのお金を良い食材に回すこともできるはずであることを発言されました。この参加者の方自身、常に体に良いものだけを食べ続けることは難しく、お菓子を食べすぎることがあったり、このような会に参加して刺激をうけて体に良い食をとるようにしたりを繰り返しているので、学校給食という毎日のとりくみを通して継続的に良い食への刺激を受けられることには、良い食のための行動をとり続けるために大きな意味があるのではないかということでした。そのほかにも、こども園と小学校で給食や食についての引き継ぎをしたら良いのではないか、有機農業に関心のある人を行政ポストに送り込むための情報誌などの仕組みづくりを始めたい!といった新たな提案や宣言も出されました。

FEASTプロジェクトでは長野や京都でも、より良い学校給食をつくるためのワークショップなどを行っています。今回の日本有機農業研究会で得られた刺激や提案を、これから各地で学校給食の未来を考えるにあたって大切にしていきたいと思います。

(撮影:FEAST)

多くの方にお集まり頂きました。

岩島研究推進がファシリテーターを務めさせて頂きました。

秋津教授による報告。

枚方・食品公害と健康を考える会の末永博子さんによる報告。

浦堂認定こども園の濱崎心子さんによる報告。