ワークショップ「社会にとって給食ってなんだろう?」@使い捨て時代を考える会・安全農産供給センターオーガニック連続セミナー(プロジェクト上級研究員 田村典江、プロジェクト研究推進員 岩島史)

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2018年11月10日、パタゴニアでのNPO法人使い捨て時代を考える会安全農産供給センター主催オーガニック連続セミナー(共催:総合地球環境学研究所、「食と農の未来会議・京都」をつくる会)にて、「社会にとって給食ってなんだろう?」と題したワークショップを行いました。はじめに、龍谷大学文学部の出羽孝行准教授から、韓国・ソウル市における無償給食をめぐる論争やその背景についての講演をいただき、それを受けて、参加者が「子ども」「保護者」「学校」「議員」の4つの立場になりきって(ロールプレイ)、それぞれの視点から理想の給食について考えるワークショップを行いました。

韓国では現在、多くの地域で給食が無償化されています。そして同時に、日本の環境保全型農産物に相当する親環境優秀農産物の使用や、直営による給食運営方式も同時に実施されています。無償でかつ質の高いものを提供する、という方針です。また給食の実施率も非常に高く、2003年には小中高全てで90%以上の実施率に達しています。このような給食のあり方は、市民レベルで始まった運動が選挙を経て実現されたものです。出羽氏によれば、給食無償化は2009年の選挙の争点のひとつで、革新派が全面無償化を打ち出したのに対し、保守派は生活困難家庭などに限って無償にするというスタンスでした。これは、普遍的福祉 vs 選択的福祉というスタンスの違いでもあったようです。給食無償化は当初は、あくまで革新施策であったので、反対派が住民投票を提起するなどの論争もありましたが、その後10年近くが経過しずっと定着してきており、学校給食無償化はもはや保守派もひっくり返せないような政策になりつつある印象ということでした。また最初はソウル市で始まった取組ですが、次第に各地に普及し、現在では広く多くの広域自治体で実現されているそうです。

韓国での非常に進歩的な取組に参加者の関心は高く、熱心な質疑応答がなされました。もちろん韓国がなにもかも優れているというわけではなくて、直営方式が増えているのは民間委託で事故が起こったため、とか、高校でも給食が出るのは苛烈な受験戦争のために高校生が長く学校にいるから、とか、日本よりも農漁村が“貧しい地域”というイメージが社会にあり学校給食による調達は社会政策としても機能している、など、給食が写しだす暗部も垣間見えました。しかしそれにしても、学校給食が子どもや保護者、学校に閉じたものではなく、社会一般の問題として市民運動を経て選挙の場の争点になるというダイナミズムに、参加者のみなさんも刺激を受け、興奮を覚えたのではないでしょうか。

後半に行われたワークショップでは、4つのテーブルで“なりきった”熱気ある議論が交わされました。最終的に、子どもチームからは「大人のおしつけではなく子どもが選べる給食」、保護者チームからは「会話のきっかけになるような給食」、学校チームからは「教師が説明できて、家庭で再現できるような給食」、そして議員チームからは「市民の要望に応える給食、地域の自慢になる給食」という理想の給食像が提示されました。子どもチームでは、何をどれだけ食べるかを子ども自身が選びたいという要望のほかに、バイキング形式にすることで、量や規格にばらつきのある地元産や有機農業の素材を使いやすいのではないかという点も議論されました。保護者チームでは、給食をきっかけに親と子、子どもと子どもなど、いろいろな人を結びつけることができる給食が理想だと議論されました。学校チームでは子どもが知っている範囲の地域の食材を利用したり、世界の食文化について学ぶ機会にすることや、孤食などで寂しい思いをしている子どもが温かい気持ちになれるような献立が理想だと話されました。最後に議員チームでは、夏休みに使われていない給食施設をこども食堂に開放するなどの方法で、その地域に住みたいと思う人を増やすことや、市民が子どもに食べさせたいと思っている食事を給食の献立に活かすことなどが提案されました。その後のディスカッションでは、現実の給食現場では、衛生面や安全面が最重視されていることや、時間とのたたかいになっていることなども論点になりました。普段の自分とは違う立場から見ることで、給食のもつ広がり、社会に及ぼす影響がよくわかったのではないでしょうか。

食を通して人々は、また人間と環境はつながっています。よりよい食を考えることは、よりより地域をつくることでもあります。「社会にとって給食ってなんだろう?」は今後も継続して開催予定です。多くの皆さんのご参加をお待ちしております。

はじまりのご挨拶(撮影:FEAST)

岩島プロジェクト推進より日本の給食についてのお話し(撮影:FEAST)

出羽先生より韓国の給食事情についてのお話し(撮影:FEAST)

グループに分かれてロールプレイング(撮影:FEAST)

(撮影:FEAST)

イベントポスター