An Article by the Mitsubachi Team published on Kyoto Shimbun (2019/8/14)

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An article “Co-designing the future with honeybees” by the Mitsubachi Team was published on Kyoto Shimbun (Evening Edition) as a serial article of “RIHN Field Notes” on the 14th of August, 2019. The following is the original full text in Japanese.

上賀茂発 地球研フィールドノート(連載)⑤ミツバチと共に未来を作る:生態系へ視野広げ 優しい街に(真貝理香、マキシミリアン・スピーゲルバーグ、クリストフ・ルプレヒト)

京都市青少年科学センターとの共催でおこなった未来のサイエンティスト養成講座「ミツバチのひみつをさぐる」で、巣箱(右中央)を前に養蜂について説明するクリストフ・ルプレヒトさん(写真奥)=7月29日、京都市北区・総合地球環境学研究所

今年4月の仏パリのノートルダム大聖堂の火災の折、聖堂屋上で飼育されていた三つの巣箱のミツバチが無事であったというニュースを聞いて、「そんなところで養蜂?」と驚いた人もいるかもしれない。パリは、都市養蜂が盛んで、オペラ座屋上の養蜂も有名だ。ヨーロッパにおいては一般に、ミツバチは極めて身近な生き物で、ドイツでは、「ミツバチは大事な昆虫」であるということを、小学生の頃から学ぶ。また、街の公園にもミツバチの巣箱が置かれたり、スーパーには、必ず地元産のハチミツが売られたりしている。

ミツバチを含め、ポリネーターと呼ばれる花粉媒介昆虫は、生態系の中で、極めて重要な役割を担う。農作物の受粉はもとより、樹木の受粉、すなわち森の涵養にも寄与するからだ。近年の、世界的なミツバチや昆虫減少のニュースを受け、今春、ドイツのバイエルン州では、「Rettet die Bienen(ミツバチを救え)」の名のもとに、「昆虫保護法」請願運動が市民から起こり、175万人︎もの署名が集まった。請願で提案された法案は7月に州議会で採決され、その内容は、農薬不使用農地の拡大や、蜜源植物の確保、川や水路を農薬・肥料の汚染から守るといった様々な政策を含むものであった。こうした運動の背景には、昆虫保護が人々の生活にも直結するという市民の共通認識があったと言えよう。

<養蜂通じ緑化推進>
われわれ3人は、人間とミツバチ、環境との関わりを社会科学的な側面から調査研究しているが、残念ながら、日本の学校教育では、ミツバチについて詳しい学習をする機会はあまりないようだ。日本には、野生のニホンミツバチと、明治期に導入されたセイヨウミツバチの2種が存在するが、セイヨウミツバチの方が採蜜量が格段に多いため、市販のハチミツのほとんどは、セイヨウミツバチによるものだ。そのことを知っている人も少ないのではないだろうか。私たちは京都市民を対象に、ミツバチや昆虫に関する意識調査を実施したことがあるが、アンケート結果から得られた一般市民の意識は、やはり「ハチは怖い」「ムシは嫌い」であった。一方で、養蜂家を対象とした調査では、実に多くが「ミツバチから、今まで気づかなかった自然や生態系について様々なことを学んだ」と、回答している。ミツバチのことを学び、ミツバチの目で社会をみると、身近な花々や街路樹や森の植生、さらにはミツバチ以外の昆虫や鳥類との関係など、今まで見えなかった生態系が見えて来る。近年日本でも、ミツバチ・プロジェクトと呼ばれる養蜂を通じた環境学習、緑化推進、ハチミツの地域・プロジェクトブランディングなどが、各地で行われるようになった。

ニホンミツバチ(2月24日、向日市)

<人間も住みやすい>
一般にミツバチ・プロジェクトでは、セイヨウミツバチが飼育されることが多いが、京都市中京区役所の屋上では、ニホンミツバチが飼育されている。私たち地球研でも、今春より、2群のニホンミツバチを飼育し始めた。ニホンミツバチは、活動半径が約2キロと小さく、蜜源不足など、生息に不適な状況が起こると、新たな巣の場所を探し逃去するという性質を持つため、環境指標としても有効だからだ。ニホンミツバチは、もともと山間部に多く生息するが、都市部においては、河川敷の雑草や街路樹、雑木の小さな蜜源植物にも訪花する。四方を山に囲まれた京都市では、京都御苑を中心に多くの寺社、府立植物園などもある。古都京都の花々を、ミツバチが訪れる風景を想像するのは楽しいが、その群が周年に渡って生存するためには、春〜秋にかけて次々と、絶えず花が咲く環境が必要で、これはまさに、生物多様性にもつながっていく。また、ミツバチや他の昆虫にとっても害となる農薬使用をゼロに近く減らしていくことも重要になる。気候変動がもたらす夏の酷暑もミツバチには強敵で、ヒートアイランドを軽減する緑豊かな環境は、ミツバチにとっても人間にとっても住みやすい環境なのだ。

昨年来、私たちは「京都をミツバチに優しい街に」というフレーズのもと、セミナーやワークショップなど、様々な活動を市民の皆さんと行ってきた。その中で重要としてきたのは、ミツバチや昆虫への意識を高めること、そしてミツバチをシンボルとしつつも、そこから広がる生態系へのビジョンを、農業や緑化を含めた街づくりへと展開することであった。ミツバチに関わる事象は、「他人事」ではなく、すべての人の「自分事」である。ミツバチよって開かれた目が、大小さまざまな活動となり声となり、社会や政策にもつながっていくことを願っている。第2水曜に掲載します。

The Mitsubachi Team with the news article (Photo: FEAST)