『第66回日本村落研究学会・大会』にて小農評価に関する研究成果発表

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プロジェクト・リーダーのスティーブン・マックグリービーおよびメンバーの松平尚也氏が、2018年10月26日~28日に、宮崎県高千穂町で開催された第66回日本村落研究学会・大会に参加しました。28日のテーマセッションにて、「小農再評価の国際的状況と日本の動向との一致とズレ」と題し、これまでの研究成果をまとめ、発表しました。

<要旨>

国連は2017年の総会で、世界の約8割の食料生産を担う家族農業に注目することが重要であるとし、2019~28年を「家族農業の10年」と定めた。しかし、家族農業の継続について、その行く末は不透明であり、世界で家族農業と小農的な生活様式が衰退している。本報告ではまず、農村開発や持続可能な開発に関連して議論される「新しい小農階級」に焦点を当て、海外の小農や小農階級に関する文献とそこでの議論の動向について検討する。小農は、開発途上国、先進国の双方の文脈に関連づけられながら世界的に研究が進んでいるが、本報告では、主にEUと米国の事例に焦点をあて、そこで使用される定義や枠組みについて日本での状況と比較検討をおこないたい。小農論に関する文献の包括的な検証には及んでいないが、現在、海外の農村社会学者に最も広く使われ影響を及ぼしている分析枠組みに注目し、農村活性化や持続可能な開発の取組についての理解の助けとしたい(Van der Ploeg & Renting 2004、Van der Ploeg 2008)。

海外の小農に関する分析枠組みで特に注目すべきは、農場や農村社会で取り組まれる多様な振興戦略が、農業者たちが実践する3つの農業生産様式、すなわち小農的、起業家的、資本主義的様式と結びつけて考えられていることである。この視角を通して、小農的農業は他の農業生産様式との違いが際立つことになる。小農的農業では、自律/自立、自然や地域社会と調和のとれた生産、農場内外の資源の多面的な利用を追求することにより、「新しい富」を創出するとともに長期にわたる継続を実現するのである。

一方、日本では農業の大規模化や企業化を目指す新自由主義的な農業政策が進む中で、その路線に異議を唱える「小農学会」が設立され、小農が対抗概念として出現し始めている(小農学会2016)。戦後の日本の小農研究や政策において、小農は克服されるべき対象・主体とされてきた。現代日本における小農学会等に象徴される主張は、小農の多面的な役割を積極的に評価しており、海外の小農論との共通性が見られる。他方で、海外と異なる日本的な特徴として観察されるのは、多様な農業へのかかわり方を含めて小農と位置づけていることや、小農評価がムラや集落と結び付けられて主張されていることである。欧米の小農論では個人の農業者が主体だが、日本ではムラとの関連性のなかで小農の議論が展開している。

本報告では、海外と日本の小農評価の相違点の背景にある思想的・歴史的系譜を押さえつつ、海外と日本の小農評価の特質を比較検討する。その結果、日本でも海外でも、小農的農業の特徴である資本からの自律/自立や農業の多様化などが様々な形で存在し、小農が食と農のグローバル化に対抗する主体として同時代的に出現している状況が観察された。その一方で小農概念の複雑性から、置かれた状況は世界的に共有されても、その発現形態は一様でないことも明らかになった。